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「コミュニケーションの相性が良い広告代理店」と「専門性が高い広告代理店」
事業主の方から、どちらを優先して広告代理店を選んだ方が良いかを相談されることがある。一見、専門性やノウハウの方が本質的に見える。対応が良いかどうかは、感覚的で付随的な評価軸に思えるからだ。
ソイルは、この問いに対してはっきりした答えを持っている。どちらか一方を選ぶのであれば間違いなく対応・コミュニケーションの質で選んだ方が良い。なぜなら対応・コミュニケーションの質は、結果的にマーケティングの成果にも直結するからだ。
本記事では、その理由と、ソイルが顧客対応のクオリティを経営マターとして扱う考え方を整理する。
マーケティングの成果は「打席数」と「スイングの質」の両輪で決まる
ソイルがお客様に提供するサービスの中核は、広告運用の作業やレポーティングではなく「マーケティングの成果を出す」「売上利益を伸ばす」ことである。そして、マーケティングの成果は、知見やノウハウ、担当者の経験やセンス以上に、事業主ごとの試行回数の量と質に依存すると考える。
野球で言えば、期待される成果を出すには、打席数とスイングの質の両輪を伸ばす必要がある。打席に立たなければヒットや四球、ホームランは生まれない。一方で、スイングが雑なら、打席数を増やしてもヒットやホームランは打てない。
マーケティングも同じである。売上利益のボトルネックを見極め、仮説を立て、施策を実行し振り返る…この繰り返し。一連のPDCAの量と質の両輪を伸ばすことが成果に繋がる。
「量」がボトルネックになりやすいのはなぜか
量と質はどちらも欠かせないが、実務の現場でボトルネックになりやすいのは「量」の方である。質の高い仮説や提案を持っていても、それを試す機会(打席)がなければ、成果には繋がらない。
また、質は仕組みでも担保が一定可能なものの、属人化しやすく、担当者の経験やセンスに依存する部分が大きい。一方で、量は仕組みで増やせる。検証サイクルの設計、意思決定のフロー、お客様との合意プロセス…これらを整えることで、組織として再現性のある形で打席数を増やせる。
ただし、量を追えば質は不要、という話ではない。質が一定担保されていることが大前提であり、雑な仮説で打席を浪費しても、ノイズが蓄積するだけである。また、機械学習ベースの広告配信では、過剰な施策変更が学習を安定させず、逆効果になることも知られている。質が担保された上で、量をボトルネックにしない。これが現実的な戦い方だ。
打席数を作るのは「信頼関係」
マーケティングにおける打席数・PDCA数は、事業主⇔広告代理店とのプロジェクトにおいては、事業主の合意がなければ基本的に増えない。
・新しいクリエイティブを試したい。お客様の承認を得てから配信するのが通常だ。
・ターゲティングを変えたい。お客様に事前に確認を取るケースも多いのではないか。
・オファーを変えたい。お客様側で社内調整が必要なはずだ。
つまり、打席に立てる回数は、事業主と広告代理店の関係が悪ければ、なかなか増やせないわけだ。逆に言えば、関係性が良ければ、この打席数はどんどん増やせる。打席数が大きく異なれば、PDCAの質が同程度であっても、成果が出るスピードに明確な差が生まれる(ただし媒体側の学習期間などの制約があるため、機械的に比例するわけではない)
信頼とは何か
関係性の質は何で決まるか。答えは「信頼の量」である。そしてソイルは、信頼を次のように定義している。
信頼がある状態とは、コミュニケーションコストがゼロに近い状態のこと。
信頼がない相手とは、何事においても説明が必要な相手であり、確認を取らずには進められない相手である。提案を通すために何度も説明資料を作り直し、誤解を解くために打ち合わせを追加し、判断を待つために業務が止まる。これはコミュニケーションコストが高い状態だ。
逆に、信頼のある相手とは、説明をせずに済む相手であり、確認を取らずに進められる相手であり、合意のための調整が要らない相手だ。説明資料がなくても提案が通り、打ち合わせは定例で十分。施策の意思決定はメールやチャットで進んでいくことも多い。
ここで誤解してほしくないのは、信頼があるからといって、確認やエビデンスを省いて良いということではない。薬機法・景表法に関わるクリエイティブなど、確認が必須な領域では、信頼があってもプロセスを守ることが信頼の維持にも繋がる。信頼とは「確認を省略できる関係」ではなく「重要な意思決定でも事前合意がスムーズに取れる関係」である。
このように、コミュニケーションが滑らかであれば、同じプロジェクトでも検証の回数は増える。同じ1ヶ月で5回しか検証できないのか、10回検証できるのかは、信頼の量で決まる部分が大きい。
信頼を失う9パータンのよくある失敗
信頼が失われる場面にはパターンがある。書き出してみると、おおむね次の9つに集約される。
(1) お客様の事業や顧客に対する理解が足りていない
(2) お客様のお金を大切にしない(予算を超過するなど)
(3) 納期などの約束が守られない
(4) 認識違いによるトラブルが多い(エビデンスを残していなかったがゆえの誤解を含む)
(5) 入稿などの単純なミスが多い
(6) なんとなく不快、熱意がない、頼りない、といった印象を与える言動がある
(7) 「持ち帰り」が多い
(8) レスポンスが遅い
(9) 提案がない、もしくは提案のレベルが低い(視点が短期的・インパクトが小さいなど)
この9つのルールは、更に2つに分類が可能である。
(1)~(6)は経験・スキルの多寡に関わらない
(1)から(6)までは、経験・スキルの多寡にあまり関係がない。つまり、意識と仕組みで防げる種類のものだ。
お客様の理解が足りないなら、ヒアリングや事前準備を努力すれば解決する。予算超過や納期遅延は、進捗管理のルールで防げる。認識違いは、議事録と確認メールで防げる。単純ミスは、チェック体制で防げる。これらは、新人であってもベテランであっても、組織として仕組み化していれば、ほぼ起きない。
(7)~(9)は経験・スキルの多寡が関わることがある
逆に(7)~(9)は仕組みだけでは防げないこともある。持ち帰りが多い、レスが遅い、提案レベルが低い。これらは、媒体知識や実務経験が関わることも多い。学び続けることでしか、対処できない。
(7)「持ち帰りが多い」と(8)「レスポンスが遅い」は、担当社数の適正化、決裁権限の設計、上長の同席、社内ナレッジの共有体制…これらが整っていれば、個人の頑張りに依存せず、レスポンスや一次回答の質を高められる。つまり仕組みで防げる側面もあるが、担当者としての力量はやはり求められるだろう。
そしてこの2分類が大事なのは、お客様とのプロジェクトを振り返る際に「気合で何とかしよう」と思わずに済むからである。仕組みで防げるものは、仕組みで防ぐ。学びが必要なものは、学ぶ。そして、新人のうちは(9)を一人で抱え込まず、上司や先輩に助けを求める判断をする。これも、信頼を守るための一つの仕組みだ。
信頼を作るには「相手を知ること」
信頼は失わないようにするだけではなく、信頼を増やしていく努力も必要である。
信頼を作る上で最も重要なことは「相手を知ること」である。たとえば、お客様の以下のような情報を知っておくと良いのではないか。
・組織目標と個人目標
・社内での報告頻度と、報告のフォーマット
・マーケティングに関する知識レベル
・担当領域や決裁の範囲
・キャリアの背景と、これからの志向
これらは、初回ヒアリングや定例会の場のみで全て知れることではない。日々のコミュニケーションを通して少しずつ把握していく類いの情報であり、デリケートな内容はもちろん無理に聞き出すわけにはいかない。しかし、これらを知っているかどうかで、コミュニケーションの質は明らかに変わってくる。
たとえば、担当者の決裁範囲を知っているかどうかで、提案の内容は変えられる。担当者の決裁で進められる範囲の提案であれば、ディスカッション形式で資料なしでも良いかもしれない。決裁権が担当者の上長にある提案内容であれば、担当者が上長に説明するための資料を一緒に作った方が良い。
担当者の個人目標も重要な情報だ。広告経由の売上のみ責任を負っているのか、デジタル全体に責任を負っているのかで、日々必要な報告やコミュニケーション、コミットメントは変わるはず。逆に個人目標・役割を知らないまま、広告のCPAばかり報告しても、担当者の評価軸とズレた報告・提案は不満を生むかもしれない。
そして、相手を知って信頼を得ることは、何も感情的な好意を得るのが目的ではない。あくまでマーケティングの成果を出すためである。信頼を得ること自体を目的にしてはならない。
顧客対応のクオリティは、会社の仕組みで決まる
ここまで、マーケティングの成果を出す上で打席数が重要なこと。打席数を増やすにはお客様から信頼を得ることが必要と解説した。顧客対応・クライアントワークのクオリティは、そのままマーケティングの成果にも直結するというわけだ。
そして、顧客対応というと、コンサルタント個人の話に聞こえるかもしれないが、実は違う。顧客対応のクオリティは、コンサルタント個人の経験・スキル・努力以上に、広告代理店の会社としての仕組みに左右されると考える。
たとえば、担当者一人あたりの担当社数が20社あれば、どんなに優秀なコンサルタントでも、即レスや丁寧な提案は物理的に不可能になる。評価制度上、売上ノルマに追われていれば、自社で結果を出せるか自信のない期待値の合わない案件でも獲得して失敗するケースもあるだろう。
ソイルは、顧客対応のクオリティは経営マターとして考え、日々どのような仕組みがあればお客様に最高のサービスを提供できるかを考えている。現在は、担当コンサルタントの定量評価をお客様へのコミットメントと同じ方向に合わせ、定量評価に売上ノルマを入れず「継続率」を設けている。また、広告代理店あるあるの「担当者がコロコロ変わる体制」は、担当者が変わる時点で信頼がリセットされてしまう≒マーケティングの成果が鈍る可能性に繋がるため、原則担当者を交代しない仕組みの維持に努めている。
ソイルもまだまだ手探りだが、少なくとも現場メンバーの「頑張り」だけで顧客対応のクオリティを上げようとするのは、広告代理店の経営として正しい姿勢ではない。土日も使ってサービスレベルを上げる、レポート・提案業務を個人の残業で吸収する。こうしたやり方は、短期的にはお客様の満足を作るかもしれない。しかし、そのプロジェクトは、担当者が変わった瞬間に成立しなくなる。そこに再現性はない。
コミュニケーションは手段、価値は発揮するもの
最後に、顧客対応のクオリティを高めることにソイルが心血を注ぐ理由は、成果を出しお客様を勝たせるためでしかない。他の広告代理店よりも高い顧客満足度を得て、契約を切られないために顧客対応を磨くわけではない。お客様の事業を伸ばし、担当者の社内評価を上げる。この結果を作るために、顧客対応を磨く。
ここを取り違えると、コミュニケーションそのものが目的化してしまう。担当者との関係は良好で、定例の雰囲気も良くて、契約も長く続く。それなのに、お客様の業績を伸ばせていない広告代理店はある。コミュニケーションが目的になり、本来の広告代理店の価値を「提案」はしているが「発揮」していないケースだ。
価値は、提案ではなく、発揮するものだ。売上利益が伸びた、担当者が社内で評価された、新しい挑戦の余地が生まれた。そういう「実際の変化」が起きて初めて、広告代理店の価値は発揮されたと言えるはずだ。
与えられたチャンスを必ずモノにする広告代理店を目指して
マーケティングは、一発のホームランで成果が決まる仕事ではない。地道に打席に立ち続け、振り続け、その中で当たり始めた仮説・施策を太く育てていく。これがマーケティングの王道なのではないか。
そして、打席に立ち続けるためには、お客様からどれだけ信頼されているかで決まる。だからこそ顧客対応・コミュニケーションのクオリティを磨く必要がある。
ソイルの使命は「インハウス・他代理店より、1円でも安く顧客を獲得する。」こと。信頼してチャンスを与えて任せてくれるお客様の成果を出し続けるために、専門性・ノウハウも顧客対応も磨いていくつもりだ。