目次
実務経験がなくても、マーケティングのポートフォリオは作れます。未経験者に求められる実績は「規模」ではなく、「仮説→実行→計測→改善」を一回転させた経験で、A4一枚に収まります。
採用側が見ているのは数字の大きさではなく、数字の読み方です。「フォロワー1万人」より「300人から600人に増えた理由を説明できる」方が評価されます。本記事は、現役で広告運用とマーケター採用代行を行うSOIL株式会社の視点で、未経験でも作れる実績の5パターンと、ポートフォリオの型・見せ方を解説します。学習手順はWebマーケティング独学ロードマップに任せ、ここでは「作り方・見せ方」に集中します。
採用側が未経験者のポートフォリオで見ている3つのポイント
採用側は数字の大きさではなく、仮説の立て方・数字の読み方・改善の判断という3つの思考過程を見ています。
ポートフォリオは「実務ができるか」ではなく、入社後に「自分で考えて動かせる人か」を推測する材料です。
1. 仮説の立て方
施策の前に「誰に、何を届ければ、どの数字が動くはずか」を考えていたかです。「とりあえず毎日投稿した」と「一人暮らしの20代向けに作り置きレシピを投稿すれば保存数が増えると考えた」では、同じ投稿数でも評価が違います。仮説がない実績は、結果が良くても偶然と区別がつきません。
2. 数字の読み方
「増えた・減った」で終わらせず、「なぜ動いたか」を切り分けられるかです。PVが増えた原因が検索流入か、SNSの拡散か、特定の1記事かで次の打ち手は変わります。切り分けができる人は、入社後にレポートを自分で読めます。
3. 改善の判断
計測結果を受けて、何を変え、何を変えなかったかです。実務は一度で当てる仕事ではなく、「外れた理由を考えて次を打つ」ことの繰り返しです。改善を一度でも回していれば、実務のイメージを持てている人だと判断できます。
「フォロワー1万人」より「300人→600人」が評価される理由
1万人でも「1本バズった」「元から知名度があった」なら再現性がありません。300人から600人でも、「テーマを絞り、プロフィールの導線を変えたらフォロー率が上がった」と説明できれば、同じ考え方を会社の商材でも使えると判断できます。採用側が評価するのは、数字を出した思考の再現性です。
dodaの「転職求人倍率レポート(2026年6月)」でも「企業による厳選採用の傾向が一段と強まっている」と指摘されています。選ばれるには「やってみて、考えた」証拠が必要です。
未経験でも作れるマーケティングの実績5パターン

ブログ・SNS・少額広告・知人の事業支援・現職の販促業務の5つなら、実務経験がなくても数字の付いた実績を作れます。
5つすべては不要です。1つを選んで一回転させることを優先してください。複数を浅くより、1つを深くやった方が面接で語れます。
① 自分のブログ(SEO)
始め方:人より少し詳しいテーマを1つ決め、GA4とSearch Consoleを設定できる媒体(WordPressなど)で始めます。1本ごとに狙う検索キーワードを決めて書きます(手順は前述の独学ロードマップ参照)。
計測するもの:Search Consoleの表示回数・クリック数・CTR・平均掲載順位、GA4の月間PVと流入元。週1回、同じ曜日に記録します。
期間の目安:3ヶ月以上。順位が動くまで時間がかかるため、「書く→待つ→書き直す」の一回転に3ヶ月は必要です。
注意点:記事数は実績ではありません。「クリックされない記事のタイトルを直したらCTRが上がった」のように、1つの改善で数字が動いた経験が実績です。
② SNSアカウント運用
始め方:XかInstagramの1つ。テーマを固定し、「誰に向けた何のアカウントか」をプロフィールに書きます。Instagramはプロアカウントにするとインサイトが使えます。
計測するもの:リーチ、エンゲージメント率(いいね・保存・コメント÷リーチ)、プロフィールアクセス数、フォロワー増減。投稿形式ごとの保存されやすさを比較します。
期間の目安:2〜3ヶ月。週3投稿×8週の24本で形式別の比較ができます。
注意点:SNSは「キャラや運で伸びた」と見られやすい領域です。「この形式に変えたから保存率が上がった」と再現できる要因で説明します。相互フォロー企画で増やした数字は深掘りで見抜かれます。
③ 少額広告の自費出稿(1万円程度)
始め方:Google検索広告またはMeta広告で、自分のブログ・SNSか④の知人の店を対象に、合計1万円程度で出稿します。1回目の結果を見て設定を変え、2回目まで出します。
計測するもの:表示回数、CTR、CPC、CV(問い合わせ・LINE登録など自分で定義)、CPA。1回目と2回目の比較が中心です。
期間の目安:2〜4週間。最短で実績になるパターンです。
注意点:1万円では統計的に十分なデータにならないため、結果は「傾向」として書き、変えたことと動いた数字を対にします。審査で否認された経験も、理由を説明できれば学びです。
④ 知人・家族の店舗や小規模事業の支援
始め方:飲食店、美容室、教室など身近な小規模事業に「無料で◯ヶ月、集客を手伝わせてほしい」と申し出ます。Googleビジネスプロフィールの整備、Instagram運用、LINE公式アカウントの導入など、課題に合わせて1つ選びます。
計測するもの:Googleビジネスプロフィールの表示回数・ルート検索数・電話タップ数、LINE登録者数、予約数・来店数(店主に聞く)。
期間の目安:1〜3ヶ月。
注意点:相手の事業に責任が生じます。「やること・やらないこと」「期間」「数字を使う許可」「店名を出すか」を始める前に文面で確認し、範囲を小さく始めます。
⑤ 現職の販促・集客業務
始め方:いまの仕事の中の「人を集める・買ってもらう」業務を探します。営業資料の改善、店頭POP、メルマガ、イベント集客、求人原稿でも構いません。
計測するもの:施策前後で比較できる数字。来店数、問い合わせ数、メール開封率、応募数など。
期間の目安:終わった業務の整理なら即日〜2週間、これから着手するなら1〜2ヶ月。
注意点:会社の数字は会社のものです。上司の許可を取り、出ない場合は「前月比+30%」のように比率で書きます。顧客名・取引額・社内資料のキャプチャは載せません。
時間がない人は③、3ヶ月以上あるなら①か②、周囲に事業者がいるなら最も実務に近い④が向いています。
未経験のマーケティングポートフォリオは「1枚の型」で足りる

目的・施策・数値・学び・次の打ち手の5項目をA4一枚にまとめれば、未経験のポートフォリオとして十分に機能します。
形式はA4一枚のPDF、またはスライド1〜3枚です。1施策1ページとし、URLで共有できる形にしておくと職務経歴書に貼れます。表紙や自己紹介ページは不要です。
テンプレート
| 項目 | 書くこと | 分量の目安 |
|---|---|---|
| 目的・ターゲット | 誰に向けて、何の数字を動かすために始めたか | 2〜3行 |
| 施策 | 立てた仮説と、何を・どの期間・どの頻度でやったか | 3〜5行 |
| 数値(施策前→施策後) | 開始時と終了時の比較。期間を明記、指標は2〜4つ | 小さな表 |
| 学び | 効いたこと・効かなかったことと原因の仮説 | 3〜5行 |
| 次の打ち手 | 次に何を変えるか。優先順位 | 2〜3行 |
記入例(架空の例)
以下は本記事のために作成した架空の例で、数値は実在のものではありません。
| 項目 | 記入内容 |
|---|---|
| 目的・ターゲット | 一人暮らしを始めた20代向けの自炊ブログ。検索流入を増やし、月間PVを3ヶ月で800→2,000にする |
| 施策 | 仮説:「表示されているのにクリックされていない記事」のタイトルを検索意図に合わせて書き直せば、記事を増やさなくてもクリックが増える。実施:Search Consoleで表示回数500以上・CTR3%未満の5記事を抽出し、タイトルと冒頭文を修正。並行して新規4記事を公開、週1回計測 |
| 数値(3ヶ月) | 月間PV 800→2,100/検索表示回数 9,500→21,000/クリック数 380→1,260/CTR 4.0%→6.0%/平均掲載順位 18.4位→11.2位 |
| 学び | 効いたのは5記事中3記事で、いずれも順位10〜20位の記事。30位以下はタイトルを変えてもクリックは増えず、順位自体を上げる必要があった。新規4記事は順位がつかず判断は保留 |
| 次の打ち手 | 月1回「表示回数が多くCTRが低い記事」を洗い出してタイトルを見直す。30位以下の記事は内容の追記と内部リンクで順位改善を試す |
数字は小さいですが、「仮説→抽出条件→結果→効いた範囲と効かなかった範囲→次の運用」が1枚に収まっています。採用側が読みたいのはこの流れです。
「伸びなかった実績」の書き方|失敗の分析は評価される
伸びなかった実績も、仮説・実行・原因分析・次の修正の4点で書けば、改善の判断力を示す材料になります。
「伸びなかったから載せられない」と考える人が多いですが、逆です。実務の施策は想定どおりに動かないことの方が多く、採用側は「外れたときにどう考える人か」を知りたがっています。
書き方の型(4点)
何を仮説にしたか
何をしたか(期間・頻度・量)
なぜ伸びなかったと考えるか(原因の候補を2〜3個、影響が大きい順に)
次に何を変えるか(原因の1位への修正と、効果を確認する期間)
記入例(架空の例)
仮説:作り置きレシピを「保存されやすいカード形式」で投稿すれば、保存が増えてリーチが広がり、フォロワーも増える。 実施:週3回×8週、計24投稿。 結果:保存率は1.8%→4.2%に上がったが、フォロワーは240人→265人でほぼ横ばい。 考察:保存はされたがプロフィールアクセスが増えなかった(投稿あたり平均3件)。原因は①投稿内にプロフィールへの誘導がなかった、②テーマが「作り置き」「弁当」「外食記録」に分散し、何のアカウントか伝わらなかった、の2点。②の影響が大きいと判断。 次に変えること:テーマを「作り置き」に絞ってプロフィール文を書き直し、投稿末尾に誘導文を入れる。プロフィールアクセス数を4週間計測する。
避けたいのは「努力したが伸びなかった」「アルゴリズムのせい」など、原因を施策の外に置く書き方です。原因の候補を自分の施策の中から挙げ、優先順位をつけるところまで書けば、改善の判断ができる人として読まれます。
マーケティングのポートフォリオを作るときの5つの注意点
他社の数値や個人情報を載せない、数字を作らない、1施策1ページ、キャプチャはマスクの5点を守れば減点されません。
1. 現職・他社の数値を許可なく載せない
会社の売上・集客数・広告費は秘密保持の対象になることが多いです。社外に出す前に上司の許可を取り、出ない場合は「前月比+30%」のように比率に変え、会社名・商材名は伏せます。業務委託先やインターン先も同じ扱いです。
2. 個人情報・顧客情報を載せない
顧客名、メールアドレス、問い合わせ内容などは一部でも載せません。知人の店を支援した場合も来店客の情報は入れず、店名を出すかどうかは店主と事前に合意します。
3. 数字の捏造は面接で必ず露呈する
面接では「どう計測しましたか」「前の月は」と深掘りされ、作った数字は細部が答えられません。採用側は毎日数字を見ている人です。小さくても本物の数字の方が、大きな作り物より評価されます。
4. 見せ方は簡潔に(1施策1ページ)
複数の施策を1ページに詰め込まないでください。書類選考で1人にかけられる時間は限られます。「どの施策で何がどれだけ動いたか」が開いた瞬間に分かる構成にし、複数あるなら最も自分で判断したものを1ページ目にします。
5. ツールの画面キャプチャは個人情報をマスクする
GA4・Search Console・広告管理画面・SNSインサイトのキャプチャは、数字が本物である裏付けになります。ただしアカウント名、メールアドレス、他のプロパティ名、請求情報は必ずマスクします。グラフと対象期間が見えれば十分です。
面接でのポートフォリオの見せ方|60秒で説明する

面接では目的→施策→結果→学びの順に60秒で説明し、深掘り質問には判断の理由を答えられるよう準備します。
60秒の構成
| 要素 | 時間 | 話すこと |
|---|---|---|
| 目的 | 10秒 | 誰に向けて、何の数字を動かそうとしたか |
| 施策 | 15秒 | 立てた仮説と、実際にやったこと |
| 結果 | 15秒 | 施策前→施策後の数字と期間 |
| 学び | 20秒 | 効いた理由・効かなかった理由、次にやること |
前述の架空の例なら、次のように話せます。
一人暮らし向けの自炊ブログを運用しています。検索流入を増やすため、Search Consoleで「表示回数は多いのにクリックされていない記事」を5本抽出し、タイトルを検索意図に合わせて書き直しました。3ヶ月で月間PVは800から2,100、検索CTRは4.0%から6.0%になりました。効いたのは順位10〜20位の記事だけだったので、次は30位以下の記事の追記と内部リンクを試す予定です。
ポートフォリオは読まれるものではなく、会話の起点です。残りは深掘り質問に答える形で深めます。
深掘り質問の例と答え方
質問1「なぜその施策を選んだのですか。他に選択肢はありましたか」 仮説の立て方を見る質問です。比較した選択肢と捨てた理由を答えます。「新規記事を増やす案もありましたが、順位がつくまで3ヶ月以上かかります。既存記事のタイトル修正なら2週間で結果が見えるので先に選びました」。
質問2「その数字は本当にあなたの施策の効果ですか」 数字の読み方を見る質問です。季節要因やアップデートなど外部要因を認めた上で、切り分けの根拠を答えます。「修正した5記事と修正していない7記事を比べると、修正した記事だけCTRが上がっているので施策の効果と判断しました。ただし外部要因は完全には排除できません」。「全部自分の成果です」は減点です。
質問3「同じことを弊社の商材でやるなら、どうしますか」 再現性を見る質問です。経験を抽象化して当てはめます。「まずSearch Consoleで『表示されているがクリックされていないページ』を洗い出します。高単価の商材ならCVに近い指標を先に見るべきかもしれないので、御社のデータを見て判断したいです」。知らないことは知らないと言い、「何を見るか」を答えます。
ポートフォリオを職務経歴書・志望動機とつなげる
ポートフォリオの数字を職務経歴書の自己PR冒頭と志望動機の根拠に使うと、書類全体が一本の線でつながります。
職務経歴書との接続
自己PRの冒頭1文に、ポートフォリオの数字と行動を書きます。「自身のブログを3ヶ月運用し、既存記事のタイトル改善で月間PVを800から2,100に増やしました」のように資格名ではなく実践から始め、「自己学習・実践」の欄にURLを記載します。
志望動機との接続
「なぜマーケティングか」「なぜ自分にできるか」の根拠に、ポートフォリオで得た実感を使います。「数字が動いた瞬間が面白かった」「思ったより伸びず、原因を考えるのが難しかった。だからこそ現場で学びたい」と体験から書くと説得力が出ます。構成と例文は未経験の志望動機(例文)をご覧ください。
資格との役割分担
Google広告やGA4の認定資格は「学習の証拠」として有効ですが、資格だけでは「勉強した人」で止まります。ポートフォリオが主、資格は補助です。位置づけは未経験のマーケティング転職に資格は必要?で整理しています。
未経験転職の全体像は、ピラー記事の未経験からマーケターになるにはにまとめています。
よくある質問(FAQ)
未経験でもマーケティングのポートフォリオは必要ですか?
必須とする求人は少ないですが、あると選考で別枠になります。未経験者の多くが持っていないため差がつき、面接で「何かやってみたことは」と聞かれたときの答えにもなります。
未経験のポートフォリオには何を載せればいいですか?
1つの施策の「目的・ターゲット/施策/数値(施策前→施策後)/学び/次の打ち手」の5項目です。施策は1つで十分で、複数あれば最も自分で判断したものを先に載せます。資格や学習ログは末尾に添えます。
ブログの読者が少なくても実績になりますか?
なります。採用側が見るのは規模ではなく、「変えたら動いた」経験とその理由を説明できるかです。月間PVが数百でも、Search Consoleを読んで改善した話ができれば十分です。小さい数字の方が動いた理由を特定しやすく、説明も明快です。
ポートフォリオはどんな形式で提出しますか?
A4一枚〜数枚のPDFが最も無難です。GoogleスライドやNotionなどURLで共有できる形にして、職務経歴書にURLを書く方法も一般的です。応募先に指定があればそれに従い、ファイル名には氏名と作成日を入れます。
まとめ:未経験のマーケティングポートフォリオは「一回転」を見せれば足りる
未経験者の実績は「規模」ではなく「仮説→実行→計測→改善」の一回転。A4一枚で示せる
採用側が見るのは、仮説の立て方・数字の読み方・改善の判断の3点
実績はブログ・SNS・少額広告・知人の事業支援・現職の販促業務の5パターンから1つを選ぶ
伸びなかった実績も、原因分析と次の修正を書けば評価される
他社の数値・個人情報・捏造はNG。1施策1ページで簡潔に。面接では60秒+深掘りには「判断の理由」
ポートフォリオを作っても、「この内容で採用側に通用するか」は一人では判断しにくいものです。ソイルエージェントは、広告運用やマーケティング支援を現役で行い、企業のマーケター採用代行も担う会社が運営する転職サービスです。採用する側の基準を知っているからこそ、ポートフォリオと職務経歴書を「通る形」に整える書類添削を、無料相談の中で一緒に行えます。
監修:SOIL株式会社
SOIL株式会社(京都・東京)は、運用型広告を中心とした広告運用代行・インハウス支援・マーケティング総合支援・マーケター採用代行を行うマーケティング支援会社です。有料職業紹介事業許可番号:26-ユ-300751。
参考・出典
doda「転職求人倍率レポート(2026年6月)」 https://doda.jp/guide/kyujin_bairitsu/2026/07.html
Google Search Console ヘルプ https://support.google.com/webmasters/
Google ビジネス プロフィール ヘルプ https://support.google.com/business/